トルシエ 2002年12月1日
 先日のWカップについてよく質問されることがあるので、二三感じたことを書いてみます。(既に方々で指摘されている事は除きます。)

トルシエのチーム作り
 今回、日本チームは、以前から懸念されてきた得点力の割りには、何とか得点出来たので、予想以上の好成績を挙げることが出来た。ただ最終戦は、勝利への意欲が薄れてしまって、消化試合みたいな印象を受けた。原因はトルシエ監督にあった。
今回、チーム作りで、トルシエは、選手達を終始、競争させ、絶対服従を要求して、意に添わぬ者を大っぴらに苛め、排除し続けた。その為に選手達は何とかしてメンバーに選ばれようと努力し、選ばれたら外されまいとして、ひたすら彼の意向に忠実に従わざるを得なかった。
動物を調教するのに、「ボスは俺だぞ」、と叩き込むやり方があるが、どうもトルシエの色んな言動を見ると、日本人を馬鹿にしていたような気がする。
こうして出来上がった隅々までトルシエが専制支配したチームだから、隊長トルシエが、目標の予選通過に成功して、勝利への意欲を失った以上、選手達がトーンダウンしてしまったのは当然だった。
それにしても、Wカップで、上位進出へ挑戦できる千載一遇のチャンスを有耶無耶に見送るとは、監督として言語道断である。

フラット・スリー
トルシエの愚行は、金看板のフラット・スリーでも見られた。
彼のフラット・スリーとは、ノーバランスでで出来るだけ前方に布陣する事を原則として、超積極的にオフサイド・トラップを仕掛けるというものである。
何しろ、オフサイド・トラップというのは、言い換えると、ラインズマンとレフリーを信頼して、タイミング良く、ノーマーク、ノーカバーの瞬間を作り出してかける。自ら無防備になることによって敵を食い止めるのだから、相手チームから見れば、もし突破出来たら、あとはキーパーだけで、得点率は非常に高い。守備側としては、絶対に失敗してはならない戦法なのである。
その上、こうしたオフサイド・トラップ狙いの浅い最終守備ラインを破る攻撃法は、今日では、別段、欧米の一流どころでなくても、少しレベルの高い指導者や気の利いた選手なら、しっかり心得ていると思わねばならない。
つまり、フラット・スリーは、決してトルシエが喧伝したような最良の戦法ではないし、かなり優秀な守備ラインでないと、リスクが高すぎるのである。
そこを考えると、懸命に駆け上がる日本チームのフラット・スリーが外国チーム相手に再三失敗を繰り返した事は、事前に十分予想された事だった。それにしても、不可解なのは、それをトルシエが殆ど修正しなかった事である。
選手達がコツを体得するのを待っているにしても、タイムリミットがあるのに、どうするのかと思っているうちにWカップが始まってしまった。呆れたことに、日本のフラット・スリーは無修正のままWカップに入り、いきなり緒戦でものの見事に突破されてしまったのである。幸いにも稲本の活躍などで敗戦は免れたけれども・・・
事ここに至っては、トルシエを恐れて辛抱してきた選手達も、流石に態度を変えざるを得なくなった。土壇場で、矯正が、選手達によって自発的に行われ、その結果、以後、フラット・スリーは消え、それに伴う失点も無くなった。状況に応じて、成功率を考慮してかける普通のオフサイド・トラップに戻ったのである。

続く


2002年11月17日     近江 達
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