WORLD CUP 2002年12月13日
トルシェ流、自動的ライン上げ

 一連の失点の原因は、森岡に代わってライン・コントロールのリーダーになった宮本が、トルシェに命じられたとおり忠実に、ラインを自動的に上げた事にあった。そこで、自動的でなく、状況判断して上げる、上げないを決めるという事に修正したわけだが、何しろ、ロングボールを相手陣内に蹴りこんだら、間髪を入れず、選手達が一斉に駆け上がる様は、まるで、それが試合の目的であるかのような印象だった。それを事もあろうに本番で止めてしまったのだから、恐怖政治のトルシェがきっと怒っただろうと思ったが、それは無かったらしい。たぶん、それは好成績のお陰で、もし負けていたら、勝手にフラット・スリーを止めた選手のせいにしただろう。しかし、止めてもよかったのなら、トルシェ流フラット・スリーとは、一体、何だったのだろう?

ペナルティ・エレアでの浅いラインは危険!

 先日、代表の新チームがアルゼンチン戦で、ほぼノーマークでシュートされて失点した。
私には、それが守備ラインがオフサイドにこだわった為のように見えた。フラット・スリーの後遺症かも知れない。
 ペナルティ・エレアでは、厳しいマーク、カバー、数的優位が原則だと思う。その上で、ケース・バイ・ケース、オフサイドを取れる状況なら取ればよい。この逆の順序、つまり、最近流行の、何処でもフラットなラインにして、相手を牽制しておいて、相手がボールを蹴った瞬間、マーク、カバーに移るという順序では、相手のレベルが高いほど、失点率が高くなる。特に、アルゼンチンのようなハイレベルになると、この試合のように、間違いなくいい鴨にされてしまう。

トッティ

 Wカップは世界各国のお国ぶり豊かなプレーが楽しみなのに、上位の常連国チームが早々と姿を消してしまい残念だった。
 イタリアはセリエAが世界のトップクラスと言われている割りには、チームも選手も出来が良くなかったけれども、トッティは予想以上に素晴らしかった。運動量も驚くほど多く、イタリアがベストフォーに残っていたから、かつてのオベラーツやプラティニに負けない名声を得たに違いない。デルピエロも一緒に出ていたら面白かったのに、そう出来なかったのだろうか?

ジダン

 名手と言えば、ジダン。ボールを足にくっつけて、大きな身体を揺らせ急旋回しながら細かい足技、特に、よくアウトを使って相手をかわして行く彼のドリブルが、私は好きなのだが、怪我には勝てず、気の毒で見るに忍びなかった。Wカップ直前の韓国でやられたので、本番でプレー出来ないように狙われたという噂が立ったが、さもありなんという気がする。
 
悪貨は良貨を駆逐する!反則、ラフプレーの問題

 国際試合で外国選手は、相手国の選手に対してラフプレーが多く、平気で怪我させたりする。だが国内リーグのように相手が同国人だと、それほどではない。はっきり区別して、意識的にやっているわけである。
 例外は日本人である。外人の場合とは全く逆で、日本人同士、激しく削りあって相手を骨折させたりする。困ったものだが、その癖、外国人にはそれほどひどくはやらない。外人に遠慮する国民性がサッカーでも出るのだろう。それでフェアプレー賞がもらえるわけだが・・・
 このWカップでも、韓国を先頭に全体に反則が多く激しかったので、テクニシャンは悩まされた。とりわけ、フィーゴのような近い間合いでかわすドリブラー達は、散々な目に遭い仕事にならなかった。
 私も現役のDF時代、ボールはともかく、相手の身体を止めろ、とよく言われた。勝負だから、厳しくなるのは仕方がないけれども、デリケートな上手いテクニックや、力ずくでは無いわくわくするような面白い場面が見られないWカップは、味気なく淋しい。

伝説のキーパーが生まれた!オリバー・カーン

 今回、優秀なキーパーが何人もいたが、文句なしのナンバーワンは、ドイツのカーンだった。これまで、バンクス、ヤシンなど、好技、好防御率、風格、貫禄などで、Wカップの歴史に残る名キーパーはいたけれども、カーンくらい、見る者を感動させたキーパーはいなかった。あの不敵の面魂(つらだましい)、勇猛果敢な突進、空中でさらに身体を伸ばしてボールに飛びつく二段ロケットのような跳躍、咆哮、そして傷つき戦いに敗れて、静
かにゴールポストに身を寄せた最後の寂寥・・・彼は絵になった。泣かせるキーパーだった!
 人々はいつまでも忘れないだろう、あの誇り高きゲルマンのキーパーのことを!

2002年12月6日     近江 達
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