お正月TV観戦 2003年2月3日
☆この正月、TV観戦が面白かったので、先ずその印象を書きます。
    
京都サンガ(天皇杯)、船橋(高校選手権)のゲームと枚方FC
 サンガは今シーズン、小粒ながら目に見えて成長して、ついに天皇杯優勝を勝ち取った。
かなりドリブルが出来て良いパスを送れる選手が何人かいたので、なかなか面白い試合になった。
 黒部の足もとに右から絶好のパスが来た。当然迎えに出てダイレクト・シュートするところを、彼はそうしないで、目の前のDFにボールを当てないようにフェイント気味にキック・ポイントをずらせて、左足を伸ばし引っかけるようにしてシュート、得点した。(私はこういうプレーが好きで是非やってみたい)。
 枚方FCの少年サッカー育成目標は、ドリブルの上手い選手が各自の判断、創意工夫で連係しパスをかわして、自由奔放に展開するサッカーであり、それが自発的に出来る選手である。
 この視点から見ると、この二つのチームが見せたサッカーは、どちらも枚方FCと同じ系統のものだったと思う。選手達はそれぞれ頭脳を働かせて、ここと云った所でドリブルをまじえ、局地的なボール・キープと、離れたスペースの味方へのパスによる展開、(サンガは持ち過ぎが時々あったが)、その為に必要不可欠な接近と、離れる動き、適度の散開といったボール無しの動きなどを、有効適切に行い終始途切れる事がなかった。
 そんな事当然ではないかと言われるかもしれないが、相手が強チームの場合、なかなかこう上手く出来るものではない。枚方と同系統と言ったのは、普通よく見られる無理なパスがない事とか、ホールの軌跡、ドリブルとパスの配合、リズムなど、随所に枚方のやり方を連想させるものが見受けられたからである。
 あのくらいが丁度いい案配で、あれ以上局地的になると駄目だし、キープなしで、どんどんオープンへボールを進めてばかりだと、速すぎてミスが増えるし体力的に無理になる。第一、それなら相手の鹿島、国見が得意とするところで、負けてしまう。両者とも自分達のやり方で押し通して、相手のやり方をさせないように頑張ったから勝てたのである。
 これは戦術の大原則で、そうした戦い方、ゲーム展開、駆け引きといったものをしっかりと心得ていて、刻々変わる状況に対して臨機応変に的確な判断工夫が出来る選手が何人も居た事が、勝利を引き寄せた。国見はその種の戦術的能力で劣っていた。叩き込まれたいつものやり方以外に、自分達で工夫して打開して行くというふうには教育されていないのだろう。
 これ迄、好調的のジュビロ、ジョルジーニョなどが居た頃の鹿島など、優れたサッカーはあったけれども、肌合いや成り立ちが枚方とは違うように感じられた。だが、今回のサンガ、船橋が見せたサッカーは枚方と同じような行き方で、やっと日本にもこういうタイプのサッカーが出現したかと嬉しかった。

国見サッカーと小嶺さん
 もう三十年も前になるが、毎年春休み、枚方FCユースは静岡の大会に参加して、帝京、清水商、静岡学園、韮崎など、名門校と試合した。当時、小嶺先生は強豪、島原商業で全国大会上位の常連だったが、校庭にいた私の所に来られて拙著、サッカーノートを買って下さった。クラブ・ユース創生期で、我々は有名高校サッカー界から異端視されがちだったが、流石に小嶺さんはそんな気配すら無く、サッカー教育変革を目指す私の著者に興味を持たれたのだろう。
 この初対面のあと、彼は国見に移り一層強力なチームを作って高校サッカー界でトップの座を確保、指導者としても名声を博した。何しろ自宅にサッカー部員を寄宿させ年中無休の猛練習、休暇になるとバスを運転し部員を乗せて遠征、全国各地で試合して回られるのだから、その熱意たるや尋常ではない。
 十数年前、大阪に来られた時、枚方も十期生が試合してもらった。村川弟らのクラスが2−3で負けたが、枚方は歯が立つまいと思っていたのに、意外なくらい個人技で上手くかわせて綺麗に得点出来た。国見に突破、シュートを許さなかったけれども、お得意のコーナー・キックで3点を奪われた。次ぎの山田晴朗先生(枚方FC・OB)の西寝屋川高戦では、国見が一点入れられた為にDFが小嶺さんに殴られた。
 国見の連続3試合可能な体力には敬服するし、大腿の太さにはびっくりしたけれども、知的能力や個人技は平凡だった。試合後、小嶺さんは、「いやあ、うちは田舎者のサッカーで・・・」、と謙遜しておられた。

☆ 以下、Wカップの感想に戻ります。
心を打ったアイルランドの敢闘

 期待したよりも低レベルだったイタリア、地味すぎたイングランド、いつもの鋭さを出せず、のれないまま終わってしまったアルゼンチン、焦れば焦るほど惨めに下降して行った王者フランス、いかに不調とはいえ、こんな姿を誰が予想出来ただろう!
 強豪たちが総崩れの中で、アイルランドの健闘が快かった。気力充分、フィールドせましと駆け廻り、これ以上は出来ないという限界ぎりぎりのプレー、全員が決して諦めず、ひたむきに勝利を目指す健気さ(けなげさ)に感動してしまった。 
ドイツの展開
 不調の欧州勢と対照的に立派だったのがドイツである。選手一人ひとりのしっかり度と来たら、いかにもドイツ人らしく堅実周到、冷静沈着で、知的な攻守が素晴らしかった。自陣内でボールを奪うと、無駄な走り過ぎも動き不足も無い程良い動きで、次ぎから次ぎへとタイミング良く正確なパスをかわしながら上がって行く展開が、ときに惚れぼれするほど見事だった。Wカップでドイツを見るたびに毎回感心させられる光景なのだが、彼らはこういう展開の仕方を伝統的に教えて来たのか、教わらなくても見様見真似で覚えていくのか、どうなのだろう?
どちらにしても、ドイツの選手達がサッカーというものを、真に理解していると云うか、極めてよく知っている事は確かである。


近江 達

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