10.シュート 2003年4月1日
◎ トラップ・アンド・シュートはリズミカルに!
日本の歴史に残るストライカー、釜本の得点は殆どがトラップしてシュートしたもの
ダイレクト・シュートのはあまり無かった。彼の、ボールを胸で受けてのハーフ・ボレーとか、いわゆる右45度からのシュートは有名だが、選手諸君は各自研究して、シュートし易いトラップの仕方やシュートへの入り方などを見つけて欲しい。
 ボールを迎えるところからシュートまでリズミカルにプレー出来ると、成功することが多い。どんなのがリズミカルなプレーかというと、釜本の胸受けからのハーフ・ボレー・シュート、ああいったリズムの感じられるプレーである。
 グラウンダーの場合、ツータッチ・パスを軽快に調子よく繰り返していると、リズミカルという感じが解ってくると思う。例えば、二人が10米以上離れて、絶えず軽快に足踏みしながらゴロのパスをかわす。左でトラップというよりもボール・タッチして素早く右でパス。次ぎは右でタッチして左でパスという具合に繰り返す。当然、最初のボール・タッチで、次ぎにすぐに蹴ることが出来るようにボールを置く。
 これが簡単すぎるなら、移動しながらやるとか、三人のいろんなパスワーク、向き直りパスなどにする。無論、ゴールへのシュートにしても良い。
 練習は一人でも出来る。自分で投げ上げたボールを胸で受けハーフ・ボレー・シュート。投げ上げて落ちてくるのをインサイドで、アウトで、右で、左で、などといろんなやり方でトラップして素早くシュートなど。実戦で役立つように試合でのプレーを想定して、わざと2米、3米と、少し大きくトラップして機敏に追いついてシュートというのも良い。CFやストライカーは振り向きざまシュートも練習しなければならない。ただ何となくゴールに蹴るのでは駄目!ゴールをあらかじめ見ておくか、トラップした瞬間、ゴールをチラリと見て、必ず狙い定めてシュートすること!

◎ シュート練習は得点練習でなければならない!
以前から声を大にして言いたかった事だが、シュート練習は得点の練習である。ゴールへ向かってのキック練習ではない。日本人は練習では巧くても、試合になると得点力がない。原因はいろいろあるが、こうした練習に対する取り組み方にも問題があると思う。練習であれ遊びであれ、どんな場合でもゴールへ向かってボールを蹴るときは、必ずキーパーが捕れない所、ゴールの隅を素早く狙ってシュートしよう!それを習慣づけてしまう事だ!もっと強烈な得点意欲や執念が欲しい。そうなればサッカーがもっと面白くなる。

ロナウドのトーキック・シュート
 トルコ戦で、ロナウドは三、四人のトルコ選手に囲まれながらゴールへ向い、ドリブルのスピードを落とさないでトーキックでシュート、得点した。予想より早く突然シュートされ、トーキック独特の球速のボールがイレギュラーがかってバウンドしたのでキーパーは防げなかった。
 トーキックが珍しくて話題になり、あれは子供の頃の遊び感覚のプレーで、Wカップの大事な試合であんなプレーが出来るのが凄いと言った人がいた。遊びは関係ないが、いかにも日本人らしい見方で、サッカーを体育としてやってきたからだろう。
 私は試合でトーキックも使うし得点も出来るのでよく解るのだが、ロナウドのトーキック・シュートは、あの状況でベストの選択だったと思う。
 トーキックはボールを突く方向がすべてを決定する。あの時、ロナウドはゴールへ直行していて、そのままボールを真っすぐに突きさえすれば得点できる絶好のコースをとっていた。トーキックだから、インステップ・キックのように体勢を変えなくても蹴ることが出来る。ドリブルはトップ・スピードだったが、インステップでシュートするには走るスピードを少し落とさないと、ジャスト・ミートしにくい。トーキックならトップ・スピードでも平気だ。おまけにインステップのような大きな動作でなく、突然、ボールを突くだけだから、キーパーは不意をつかれるので防ぎにくい。
 ロナウドはそうした事をよく知っていて、今、トーでボールを突いたら得点出来ると直感してシュートしたに違いない。走る速さはトップ・スピードのままで、ボール・タッチを巧くコントロールして、ボールが転がるスピードだけを落とせば、妨害を振り切ってインステップでもシュート出来たと思うけれども、そんなことよりも、とにかく、あの場合はトーキックが最適、かつ容易だったという事である。

◎ トーキック・シュートを研究して得点しよう!
 トーキックをすると馬鹿にされる。指導者に怒鳴られ、得点しても悪口を言う人が多い。だが是非考え直して欲しい。剣道の突きはトーキックみたいなものだが、決まれば立派な一本である。卑怯でも幼稚でもなく堂々たる技術である。
ましてサッカーは点取りゲーム。要は得点だから、キックの種類など何であろうと構わない。ロナウドのように、プレヤーはその時の状況や自分の体勢などから、ベストと思う蹴り方でシュートし得点したら良いのである。
ちなみに、一昔前の名手、フリッツ・ワルター(独)は、「皆、トーキックを馬鹿にするが、私は何回もトーキックで得点した。トーキックといえども、練習しないとなかなか得点することは出来ないものだ」、と語っている。
こんな事を言うのは私くらいのものだろうから、トーキックの特長などを挙げておく。球速は速く鋭い。カーブも掛けられる。ドリブル・シュートの場合、走っているコースの延長線の方向に蹴るなら、ボールを置き換えなくてもよい。だからボールを蹴りこみたいゴール内の一点に向かってドリブルで直行して蹴るのが、原則である。小さい動作で咄嗟にいきなり蹴ることが出来る。大きな踏み込みもバックスイングも要らないので、キーパーは防ぎにくい。
 ゴール付近での競り合い、相手の妨害で一瞬を争うとか、混戦や人が多い時に僅かな隙間を狙うのに最適である。止まったままパスやシュートをしなければならないとか、スペースがない場合でも、トーキックなら可能で、意外性を狙ってやるという手もある。研究して、得点、クリア、パスなどに活用すると良い。 



近江 達

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