(48)§ディフェンダーとしての反省、スリーバックの弱点 近江 達
§ディフェンダーとしての反省、スリーバックの弱点
 現役最後の年、私はセンターバックで次ぎに書いたように慎重に戦い、東西一部リーグ中位の東大、同志社、京学大を相手に1対1では負け知らずだった。最強の関学とは試合がなかったが、京大も好チームだったので試合したら面白かったと思う。スリーバックの最終守備ラインの方は、バックとバックの間隔が広がると相手の選手に狙われて、後方からフリーで上がって来て突破される弱点があった。たとえば右フルバックがその選手に向かうので早過ぎるとノーマークになる左ウイングにパスされるので、ギリギリのタイミングで向おうとして遅れてシュートされ失点した事があった。

§最終ラインの守備、私の1対1の戦い方
 中盤と違って、最終ラインでの失敗(1対1の敗北を含む)は失点に直結しやすい。従って何回攻められようと全て失敗なしで防ぎきる事を要求される。極言すれば、攻撃は1点取れば成功で何回失敗しても構わないが、守備は逆だ。何回うまく防ごうとそんな事は出来て当り前で、失敗の方が問題になる。つまり守備は失点ゼロ、失敗ゼロが最高点で、それを目標に失敗しないように戦うべきマイナスの世界なのである。
 そこで私は先ず第一に二、常に良いポジションをとってノーマークをなくし、シュートコースを消し、スペース警戒した。第二に、確実にボールを取れそうにない時は、ミスや相手に付け入る隙を与え易い一か八かの冒険は控えて、密着マーク、不利なコースへの追い込み、タックルのフェイントで脅かす、相手のフェイントにかかった振りなど、あらゆる手をつくして、チャンスを見つけてボールを奪った。第三に、ペナルティエリアに侵入させないようにタックルしたが、一回だけで終わりでなく、あいてにかわされて置き去りにされる事がないように、絶えず正面に回り出来るだけ矢継ぎ早に妨害して、ゴールに直行させないように行く手を塞いだ。

§とにかく負けない事!それが勝利につながる、積極派の不満
 絶対負けないように、未然にいろんな場面を想定して、ミスや相手に隙を見せないように粘り強く戦うのが私の流儀だった。ディフェンダーは運動神経が多少劣っていても、良いポジションをとり、読み予測、万一への備え、早めの対応などと頭を働かせればうまく守れた。だが見ている人々はそんな工夫がわからず、勇ましいタックルが大好きだ。失敗して相手に置き去りにされても咎めないくらいだから、私の慎重さは不評だった。それで私もより早く厳しく仕掛けるように努力したが、百点か零点という戦い方はしないで、もし失敗しても失点に至らぬように挽回出来る工夫をして挑戦した。お陰で戦績は、監督が抜擢した選手や猛烈なファイターよりも、不評だった筈の私の方が明らかによかった。世間の評判などといい加減なものだという事がわかる。
 チームでは緒方が積極果敢の固まりだった。三回生入部で全国大会準優勝の高校時代の活力を取り戻すべく独り5000米ドリブルを続けた努力家で中盤で攻守で大活躍したが、当たりが関東流できつい為に相手と揉める事もあった。シーズン終了後、彼は来年はツーバック・システムで、自分はセンターハーフをやると意外なことを告げた。理由は今年のようになりたくないからだと言う。言外に私への批判が感じとれた。

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