(49)§何故、今どきセンターハーフ? 近江 達
§何故、今どきセンターハーフ?
 緒方(後に東京経済大教授)は私のやり方が相当歯痒かったとみえる。ツーバックをやる事に反対して別れたが、センターハーフは最終ラインで待ち構えるセンターバックよりも前に位置して、相手から早くボールを奪い積極的に攻守両面で活躍出来る。攻撃が好きな彼は、だからツーバック・システムにしたいのだ。当時既に殆どのチームはスリーバックだったが、インターハイの三高戦では神戸一中出の強力なセンターハーフが活躍した。それを見ていたので彼の狙いはおおよそ見当がついたのである。
 しかし昔はツーバックでも守れたし、広い地域で活躍するセンターハーフはローリング・センターハーフと呼ばれて花形だったが、今は彼がいかに優秀でも無理だ。1925年のオフサイド・ルール改正以後、相手は何人でもこちらの最後方のバックの線迄前進出来るので、最終ラインが二人では到底守りきれない。例えば相手がスリートップだと一人がフリーになってしまう。だからどうしても最低三人は必要なのである。
 スリーバックで守っても、相手はよくセンターバックをおびき出して、スペースを作ろう、ツーバックに減らそうとする。そのくらいだから、センターハーフをやるのは既に罠に掛かっているようなものだが、彼はそんな事は全く考えた事もないだろう。自信家だからセンターハーフで大活躍するイメージしか描いてなかったと思う。

§翌年チーム、ツーバック・システムで失敗
 翌年、守備陣から4人卒業して、センターフォワード大羽主将の新チームは計画どおりツーバック・システムをとったが、成績は良くなかった。昨年快勝した定期戦は京大1−5同志社、京大2−8東大と完敗。東大戦は前半、岡野率いる東大フォワードに活躍されて1−6、後半、大友が岡野を密着マークしてやっと1−2で食い止めた。守備陣が機能せず、センターハーフ緒方も最後は諦めて苦笑していたと言う。
 7チームに増えた二部リーグも、京大2−3大阪教育大、一部から落ちてきた大阪経済大に0−6と大敗して、6試合、4勝2敗、3位で終わった。得点25、失点11、得失点差+14、随分派手な試合をやったものだ。もし京大が去年一部に上がっていたとしても、これでは今年最下位で二部に逆戻りしたに違いない。ちなみに私の時は1チーム少なくて5試合、得点10、失点2、得失点差+8、3勝2敗、2位だった。

§敗因
 昨年私でも岡野を押さえたのだから、技能体力一流の緒方なら彼を完封出来る筈で大敗は意外だった。岡野氏は「今年こそは、と思っていたのに前日から雨で、今年もやられるのかな?と厭な予感がした。グラウンドは悪コンディションだったがチームの方は極めて好調、試合早々から京大を圧倒した」と書いている。配置上、ツーバックの京大守備陣は東大のW型攻撃陣をマーク出来ない。布陣を変えないで防ぐには各選手に然るべき戦術眼と臨機応変の対応力が必要で、彼らには無理だ。その上東大は昨年京大には負けたが、全盛期で好選手揃いだから大敗は当然だった。ツーバックは攻撃向きで守備は脆い。秋のリーグでも攻め上がっては逆襲されて失点したと思う。得点が多いが失点も多い事がそれを物語っている。明らかに戦法戦術の失敗だった。

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