(63)§チャナディーで練習法開眼!練習は試合のように! 近江 達
§チャナディーで練習法開眼!練習は試合のように!
 病院勤務の傍ら休日はほとんどサッカーになった。試合だけでなく時折練習もしたので、チャナディーの目新しい試合中の一場面的な練習法を試すチャンスがあった。例えば、センターフォワードの位置でいろんな方向から来るボールをコントロールしながら向き直りシュートして得点する。次ぎにその前後にフェイントを入れ、出来るようなら軽く妨害する守備者をつけて練習した。効果は若い選手の方がよくわかる。前から来るボールのシュート練習しかやった事がなかった工専生の大川君は、延べ僅か数日の練習で見違えるくらい上手くなった!これには驚いた。
 戦後欧米と交流が盛んになると、彼らはよく日本は練習法がよくない。試合中の一状況や一場面をもっと練習すべきだと言った。確かにそういう実戦的な練習はお決まりのコーナーキックやコンビネーションと呼んでいた攻撃陣対守備陣の攻防しかなかった。それに技術戦術的練習も毎日同じ基本の型やパターンの機械的繰り返しだった。というのは古来、日本人は型が大好きで、基本さえ、習い性となる迄反復修得しておけば試合で通用すると伝統的に思い込んでいたからだが、テニスならともかく、サッカーは相手に荒っぽく妨害されるのでそうはいかない。無論コーチは修正指導した。だが例によって口頭で教えるというよりも叱るだけで、状況を再現し実戦的練習で対処法や対敵プレー技能の改良向上を図る、といった発想や工夫は殆どなかった。
 私もそうして教育された一人だが、低いレベルなりに対敵プレーは人よりも多少ましだったように思う。それは8歳から遊びのサッカーで1対1などに熱中したお陰で、丁度良い実戦的な練習になったのだろう。部活の練習だけでは無理だった。
 優れた練習法は選手を著しく向上させ彼を変える。説教よりも練習法を重視する私は実戦的練習法の有効性がわかったので最大限活用する事にした。同時に、従来長時間かけていた相手がいない所でのプレー練習は最小限に留めた。目的は敵の妨害に耐え打ち勝てる戦いの智恵や実戦的技能の体得向上である。その為に、試合中に出くわすいろんな場面や状況を設定して、必要な技能を能率良く改良上達させ得る練習法を考案工夫し、容易な状況で始め、次第に条件を難しくして、妨害する相手をつけ、より試合的な状況にしていった。練習は試合のように!これが私のモットーになった。

§鍛錬し耐え抜いて強化するか、能率良くハイレベルを目指すか
 これ迄にない選手に育てるには従来と違う方法をとるしかない。クラーマーの講習記事、サッカー雑誌や英独ソの翻訳ものからも収穫があり、イマジネーション、創造性重視など、彼我の違いは参考になった。日本は連日猛練習で鍛えるほど強くなると信じて疲労は眼中にないが、外人は疲労に配慮し練習量や内容を加減する。疲れた状態で練習しても技術戦術をうまく習得出来ず上達しないからで、例えば月水はきつく、火木は中くらい、水土は軽くやる。一日の練習の中で敏捷性を高めるトレーニングは初めに短時間。戦術関係も時間が経つと集中力が落ちて頭脳の働きが悪くなるので、疲れていない心身が新鮮なうちに行う。現在持っている技能のレベル維持に週2回、向上に3回以上の練習が必要など、独学で知識がかなり増えたので私もコーチらしくなり、少年たちの指導育成、練習法の考案、サッカーノート執筆などに大いに役立った。

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