(76)§往年のゴールゲッター二宮さん 近江 達
§往年のゴールゲッター二宮さん
 日本の名センターフォワードといえば初代がゴール前の神様、ベルリン五輪の川本泰三(早稲田)、二代目が二宮洋一、三代目が釜本邦茂。その二宮さん(神戸一中、慶応、日本代表)が日本クラブユース連盟会長で関西の会長だった私はお話を伺える機会があった。名選手に会うとプレーのコツなどを教えて頂くことにしている。バックの密着マークをどうするか?尋ねると、ボールが来る直前にバックを押して、相手が押し返してきた瞬間、身を翻してスタート、振り切る、と教えてくれた。偉ぶらず爽快な紳士で、シニアの北欧遠征、ダイビングヘッドで得点したとか、幼稚園の孫にドリブルが上手いと褒められた、そりゃあ出来るよねえ、などと笑顔で話してくれた。
§教える為に実技練習
 現役時代に無かったボールリフティングを教える為に40歳過ぎてから練習した。ウェイト・トレーニングもジャンピング・オーバーヘッド・キックもやった。紅白に選手の手本になるつもりで参加、夏は猛暑で疲れて夕飯を食べられなくなって牛乳ばかり3、4リットルは飲んだ。キーパーも横飛びダイビング・キャッチは無理だが、突進して来る選手に向かって前進しシュートを寝て阻んで一度軽い脳震盪になった。
§やらされるのでなく、自分でやる!自発自力で向上させよう!
 私が指導に専念している間にクラブ員は200名を越え中高生の部が生まれてOBがコーチになり枚方FCは自然発生的に発展した。その陰には保護者をはじめいろんな方々のご支援があり改めてお礼を申し上げたい。グラウンドもクラブハウスも無いが皆のクラブという雰囲気が嬉しい。高度の技能故に一流チームの目標になりマスコミに称賛されて枚方を全国に知らしめた。これほどまでに向上出来たのは、自由なゲーム的実戦的練習は面白いので少年たちが進んでやる。熱中して上達するともっと面白くなって一層やる気になり好循環が生まれるからだ。これがキーポイントで、昔から勉強はやらされるのではなく自分から進んでやるようになれ、と言われてきたが、サッカーも全く同じだ。こうすれば皆必ず上手くなる、間違いないと確信できたので指導者諸氏に推奨したが、「(私が言ったように)自由にプレーさせておくと、どんどん悪くなっていく。辛抱できない。やっぱり子供は教えて叱ってやらせないと駄目だ!」と断られ、気が長い私以外は無理だ、十年、いや二十年早い、と言われてしまった。
 だがやらせて叱って絶対服従的に仕込めば強化は出来るが、指導者が熱心にやるほど少年は行動思考を制約されロボット化する。日本式教育は自立を妨げ遅らせる。ずっとやらされてきた為に日本選手は大人になっても自分で考えてプレーするのが苦手だ。将来の為に子供達を面白くのびのび育てよう!心配無用!サッカーが大好きになれば子供なりに主体性が出来て自力で向上していく。厳しい指導は自立後にやるべきだ。
 でもあれから30年、昨今少年たちは少し変わって来た。ボールを持っても以前ほど叱られないのか上手くなって昔の枚方的な選手がいる。Jリーグの影響も大きい。日本協会もやっと、やらされるのでなく、私が言ったように、子供の頃から自分で考えてプレーするように指導方針が変わって来たらしい。今後が楽しみである。

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