(86)§何故パスをくれないのか? 近江 達
 センターフォワードには滅多にパスが来なかった。出来れば相手の不意をつくとか、相手が困る所やコースに意外性のあるパスが欲しい。チャンスは結構ある。だが味方が前以て見てないし、ボールを持っても見つけてくれない。第一、大抵の選手がパターン攻撃で約束事的にプレーしてきたので、相手の隙や意表をつく発想がない。タイミングもボールをもっている選手が、受け手が今ここへ欲しいというタイミングでなく、自分がパスしたい時に相手にはっきりわかるパスをするので狙われ、こちらも新米でマーク外しや素早くボールによるのが下手だからよくカットやタックルにあった。
 マークされていて駄目だというが、アイディアとやり方次第でワンツーや一旦預けるなど、センターフォワードを利用出来る筈だ。それにたまにしかボールが来ないととてもやりにくくて、シュートの修正、妨害などを知る為にも3回は欲しかった。
 昔はロビングや長い縦パスでトップを走らせた。今はつないでハーフラインを越えてからが多いが、時間と手数をかけるほど守る人数が増えてゴールに近づくほどスペースが消えるので、もっと早目にスペースのあるうちにシュートさせて欲しい。
 韓国の攻撃はゴールを狙って来るから怖いが、日本はつなぐだけで怖くないという。私はバックもやったのでよく分かる。一回でも多くチャンスを作るべく絶えず得点を狙い続けて無理ならつなぐという順序でやるべきだ。ゴールまで広いスペースがあってもなかなかスルーパスが出ない。出ても大抵きつすぎてキーパーに取られた。
§何故パスをくれないのか?
 相手の攻撃が続いてハーフライン手前で待機していると、まるでやる気がなさそうだと言われた。そんなことはない。そう見せて相手を油断させ、突然スタートして全力疾走するのが私の流儀である。だから相手にそう見えれば成功だが、味方まで私が走る気がないと思ってパスをくれないので困った。ボールさえ貰えたら一仕事できるのにわかってもらえない。これは昔からで、よく言えばポーカーフェイスだが、やる気を外に出さない悪い選手の見本で、学生時代、先輩の受けが悪かった。
 攻撃面で選手にはパスの出し手と受け手、二つタイプがあり、トップは得点を狙っていい所へ動いてパスを受ける。だが本来私はラストパス出しが得意なゲームメーカーで、動き廻る受け手タイプでないので省エネと言われた。確かにもっと動いてパスを引き出し、クサビのパス受けも守備陣撹乱もやるべきだ。でも私にも言い分が合って、折角動いてもフリーでもパスをくれないしパスが不正確。中央に空けたスペースに誰も入らない。それより自分が中央でチャンスを待つ方が得点率が高いと思うのだが。
§褒められて
 暁FCのリーダー、松木さんは暁を全国有数のクラブに発展させたやり手で、枚方FCと私の業績を知っておられて暁サッカークラブの殿堂入りをさせてくれた。とても暖かく好意的で、いいプレーをすると、「絶妙のパス!」などと褒めてくれた。
 ある時、試合後休んでいると、よそのクラブの知らない人がわざわざやって来て、「動かないようでもここという時はよく走るし、得点を決めるべきところはしっかり決める!お幾つですか?僕より年上ですね!」と言われた。大したプレーはしてない。

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