(87)§シニアで初めて成功したプレー、技術の有り難さ 近江 達
年とってミスが多くまさか褒められとは全く意外で、しかもそんな事が何度かいろんな所であったものだから驚くやら恐縮するやら、初めての経験だった。幾つになっても褒められると嬉しい。励みにもなり、人を褒める事も大切だとよくわかった。
 そう言えばJリーグが始まってから得点すると抱き合ったり倒れこんだり大騒ぎだが、以前あんな事は無かった。もともとシャイだし、昔は日本のスポーツは全て学校教育の一環で武道の礼節が入っていて、勝者は敗者の気持ちを思いやり喜びを表現しなかったのである。だからというわけではないが私も昔人間で得点しても何もしなかった。ところが、今どき珍しい朴念仁ぶりに見かねたのだろう、松木さんにとうとう、「先生、もっと喜びなさい!」と言われてしまった。言われてみるとそれもそうだなと思わぬでもない。それ以来、一寸照れるが、得点したら右手を上げることにした。
§シニアで初めて成功したプレー、技術の有り難さ
 病後プレー出来るだけで満足していたが次第に欲が出てきた。だがスポーツは冷酷で年齢差・イコール・体力差。年長者はより若い者に必ず負ける日が来る。ただ走る速さ、敏捷性、身のこなしなど、年々体力は落ちてくるが、技術の衰えは体力ほどでない。かつて優秀だったのに体力が技術をカバー出来なくなって平凡になった人を見ると、若い頃大した事はなかった私がいまだに多少ましなプレーが出来て年下10歳までなら負けないのは技術のお陰で有り難い。前記したゲルト・ミュラーばりの得点のように、シニアになって生まれて初めて出来たプレーもあるので書いておきたい。
 ◇右からのハイクロスをゴール前で右足インサイドでボール・リフティングのように受けて、落ちて来たのを横殴りに右ボレーシュート、ボールはゴール左隅に入り得点(かつてクラブ世界一決定戦でのプラティニのシュートに少しだけ似ていた)。
 ◇ペナルティエリア左外、相手バックを左足シュートのフェイントでかわし、右足でミドルシュート、ボールはゴール右隅に入り得点。型どおりだが私は初めてやった。
 ◇ゴール手前、左外でマークされて背面、後方からのボールを受けて左横へ出るようなフェイントをかけ、実際はボールを右足アウトで受けながら右横から時計回りでマーカーをかわしつつ向き直り左でシュート、ゴール右隅に得点。左へ処理する場合は全て逆、右シュートで左隅へ。アウトでボールを切って回転を与える事もある。
 ◇前進したキーパーの頭上を越える30米のロビングで得点。シュートがキーパーに当たり右ゴールライン際に返ったボールを掬ってキーパーを越えゴール左奥に得点。
 ◇味方がシュート、キーパーがボールをこぼし、私はゴールに突っ込みすれ違い。ゴールに背を向け素早く戻りボールに追いつき、またいだ右足ヒールシュートで得点。
§不向きなポジション
 センターフォワードになったのは案外得点したからで、白線では君しかいない、京大OBからは大学時代もバックよりトップがよかったのになどと言われて好評だった。でも初めはよかったが次第に得点がプレッシャーになってきた。点取りや特有の強気も図太さも資質もない。たまたま他に適任者がいなかっただけだから、不調と見られると外され、大会でよそに応援を頼むとその選手が入り私は左ウイングに回された。

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